モーサテ 3/19

主要ニュース

1. 米国の住宅市場

全米住宅建設業協会が発表した3月の住宅市場指数は51で、市場予想を上回り、2023年7月以来8カ月ぶりに50(好況と不況の分かれ目)を上回りました。住宅ローン金利が低下し続けると、住宅を購入する人が増えるとの見方を示しています。

2. 中国の不動産投資と小売売上高

中国の国家統計局が発表した2024年1月から2月の不動産開発投資額は、1年前と比べて9%減少しました。一方、消費動向を示す小売売上高は5.5%のプラスで、2023年通年の7.2%の増加からは鈍化しました。

3. KDDIとELYZA(イライザ)

KDDIは、生成AIの開発を手がける東大発の新興企業「ELYZA(イライザ)」を連結子会社化し、株式の53.4%を取得します。KDDIは、この春以降、企業や自治体などに向けた生成AIのサービスを展開します。

注目ポイント

米国の住宅市場が活況、中国の不動産投資は減少、KDDIがAI新興企業を傘下に

米国の住宅市場が好調を維持しています。全米住宅建設業協会が発表した3月の住宅市場指数は51となり、市場予想を上回りました。

これは、2023年7月以来、8カ月ぶりに好況と不況の分かれ目とされる50を上回ったことを意味します。住宅ローン金利が低下し続けると、住宅を購入する人が増えるとの見方を示しています。

中国の不動産市場は冷え込みが続いています。国家統計局が発表した2024年1月から2月の不動産開発投資額は、1年前と比べて9%減少しました。

しかし、消費動向を示す小売売上高は5.5%のプラスとなりましたが、2023年通年の7.2%の増加からは鈍化しています。

日本の通信大手KDDIは、生成AIの開発を手がける東大発の新興企業「ELYZA(イライザ)」を連結子会社化すると発表しました。

KDDIは、数十億円を投じて株式の53.4%を取得し、この春以降、企業や自治体などに向けた生成AIのサービスを展開する予定です。これにより、AI技術の進化と普及がさらに加速することが期待されます。

【NY市場リポート】米国経済の今後:住宅市場と消費動向の変化

解説は日本生命NY投資現地法人の漆山龍彌氏

アメリカの経済環境は常に変化しており、その変化は世界中の市場に影響を及ぼす力を持っています。今回注目するのは、住宅市場と消費者の行動の変化です。ニューヨークからの最新レポートを基に、これらの変化がどのようにして米国経済に影響を与えているのかを見ていきましょう。

消費動向に見る変化

まず、消費者の行動から見える経済の兆しについてです。ディスカウントストアの大手、ダラー・ツリーとダラー・ゼネラルが収益見通しの弱さを理由に株価が大きく下落しました。

これらのストアは、主に低所得者層をターゲットにしていますが、インフレの影響や給付金の削減により、この層の消費力が弱まっていることが伺えます。

ダラー・ツリーは不採算店舗の閉鎖を発表し、ダラー・ゼネラルは万引き被害に対応するための措置を講じています。

これらの動きは、低所得者層の消費行動に大きな変化があることを示しており、米国経済における一定の減速の兆しを示唆しています。

住宅市場の動向

次に、住宅市場の動きです。アメリカでは、住宅の仲介手数料が一般的に6%程度と高い水準にありますが、この業界慣行が訴訟の対象になっています。

特に、仲介手数料を高く保つための共謀が問題視され、大規模な損害賠償が認定される判決も出ています。

この背景を受けて、不動産業者協会は手数料の透明性を高めるための新ルールを導入することになりました。これは、特に買い主側の仲介業者の競争を促進し、手数料収入が減少する可能性があるという予測も立てられています。

しかし、これが住宅市場の活性化につながるかどうかはまだ未知数です。

経済への影響

これらの動向は、アメリカ経済における重要な変化点を示しています。消費者行動の変化は経済全体に波及する可能性があり、住宅市場の透明性向上は長期的にはポジティブな効果をもたらすかもしれません。

しかしながら、短期的には業界に大きな変革を迫ることになり、その過渡期には不確実性が高まることが予想されます。

結局のところ、これらの変化が米国経済にどのような影響を与えるのか、注意深く見守る必要があります。市場は常に変化しており、その動きを理解することが、将来の経済状況を予測する上で重要な鍵となります。

【為替見通し】日米金融政策と為替市場の今後

解説はマーケット・リスク・アドバイザリーの深谷幸司氏

  • ドル円の予想レンジ:148.30~149.60
  • 注目ポイント:日米金融政策のリスクバイアス

為替市場は日米の金融政策に大きな影響を受けます。特に、日本銀行とアメリカ連邦準備制度の動向は、投資家にとって常に注目の的です。

この記事では、マーケット・リスク・アドバイザリーの深谷幸司氏の解説をもとに、これらの政策が為替相場に与える影響について考察します。

日本の動向

日銀会合と植田総裁の発言は既に市場に織り込まれており、これ以上の大きな反応は期待できないでしょう。特に、植田総裁は追加利上げに消極的な姿勢を示しており、円安問題に対しても慎重なスタンスを保っています。

これは、黒田前総裁の黒田砲と呼ばれたサプライズの時代とは異なり、市場へのショックを避ける方針を示していることからも明らかです。その結果、円相場のボラティリティは抑制されると予想されます。

アメリカの状況

一方、アメリカでは、強固な景気と物価の高騰が続いていますが、FRBのメンバー間の意見は分かれています。

市場は、米連邦準備制度が早期に金利引き下げに踏み切ると予想していましたが、最近の状況では利下げの回数が減る可能性が高まっています。

これにより、短期的にはドル高が進み、150円台を試す可能性もありますが、予想外の情報がない限り、145円から150円の範囲でのもみ合いが続くと見られています。

今後の展望

日本の慎重なスタンスとアメリカの金融政策の不確実性が、市場の予測を難しくしています。しかしながら、これらの動きから為替相場の短期的なトレンドを見極めることは可能です。

市場参加者は、両国の政策の発表を密接に注視し、柔軟な対応が求められるでしょう。

結局のところ、日米の金融政策の方向性は、今後も為替市場の重要なリスク要因となりますので、市場が注目するテーマだということを理解して、相場をみる必要がありますね。

【株価見通し】新年度相場への期待とその背景

解説は岩井コスモ証券の林卓郎氏

  • 日経平均の予想レンジ:39400円から39800円
  • 注目ポイント:新年度相場への期待

新年度の訪れと共に、株式市場には再び活気が戻ることが期待されていますが、明日のFOMCや、日銀イベントなどの大きな経済イベントを控え、短期的には上値の重い展開が予想されます。

新年度相場の背景

過去のトレンドを見ると、3月には株安傾向が強い一方で、春に向かうにつれて株価が上昇する傾向にあります。この傾向は、コロナショックの2020年を含め、過去数年にわたって確認されています。

例えば、シリコンバレーバンクの破綻や米利上げの開始など、3月に記憶に残るような経済的ショックが発生しても、その後の市場は回復傾向を見せています。

海外投資家の役割

林氏は、新年度入り後の4月から6月期にかけて、海外投資家の買い支えにより株価が修正高する傾向があると指摘しています。

過去20年の平均で見ると、3月の安値から6月までの高値への上昇率は約15%にもなります。このデータは、新年度相場に対する期待が高まる一因となっています。

物色の特徴

物色面では、4月に入るとグロース株や大型株、外需株が優位に立つ傾向があります。

しかし、4月から6月にかけては、スタイルにかかわらず全般的に株価が上昇するため、個別要因がより重要になると林氏は述べています。

これは、新年度相場では個別業績に注目し、個別株の押し目買い戦略が有効であることを示唆しています。

マイナス金利解除後の「不連続」はない【プロの眼】

ゲストはみずほリサーチ&テクノロジーズの門間一夫氏

  • マイナス金利解除へ、市場は大きな動揺なし?

日本のマイナス金利政策終了の影響と金融政策の見通し

日本銀行のマイナス金利政策の解除後に向けた動きが注目を集めています。この政策変更後に「不連続」が生じることはないと見ています。

最近の金融政策決定会合では、マイナス金利の解除が予測され、市場も既にその織り込みを進めています。特に、春闘での賃上げ率が予想以上に強く出たことが、政策変更のタイミングを前倒しする可能性を示唆しています。

春闘の賃上げ率は前年比5.3%と、驚くべき数値を記録しました。これは、30年ぶりの高い伸び率であり、日銀にとってはポジティブなサインと捉えられています。

この背景から、日銀はマイナス金利解除の他、イールドカーブコントロールやマネタリーベースの拡大方針など、複数の政策手段の見直しを行う可能性が高いです。

門間氏は、新しい政策金利として、無担保コールレートを0から0.1%の範囲で推移させると予想しています。これにより、2016年1月以前の状態へと戻すことが狙いです。

また、イールドカーブコントロールの撤廃や、株式のETF購入方針の変更も予想されています。

市場への影響については、短期金利のわずかな変動を除き、住宅ローンへの影響など大きな変化は予想されていません。10年金利も上限の1%に達していない現状では、政策の変更後も実質的な影響は限定的だと考えられます。

ETFやJ-REITの購入方針についても、近年の買い入れ減少から、政策の撤廃が直接的な影響を与えることはないとの見解です。

最終的に、マイナス金利の解除後も、市場における大きな不連続は発生しないと門間氏は述べています。これは、過去に行われた政策の修正が、すでに市場に織り込まれているためです。

今後の焦点は、日銀がどこまで利上げを進めるか、そしてそのタイミングになりそうです。

プロの視点で見るカンニング戦略とUSスチール買収の行方

アメリカ株市場の投資戦略として、「カンニング戦略」が注目されています。

これは、「高配当」「好配当」といった名前がついたファンドの上位組み入れ銘柄から、複数のファンドに共通して投資されている銘柄を選び出し、そのジャンルや利回りを参考にして個別銘柄を選ぶ方法です。

この戦略は、プロの運用マネージャーがリスクを取って選んだ「ファンドの顔」とも言える銘柄を、個人投資家が真似することで、プロの技を”盗む”ことができるとされています。

対象となったのは、純資産が200億円を超える高配当・好配当銘柄の投資信託から5銘柄がピックアップされました。

  1. JPモルガン・チェース
  2. アップル
  3. フィリップモリス・インターナショナル
  4. ブロードコム
  5. IBM

これらの銘柄は、運用会社が公開する月次レポートにより、その上位組み入れ銘柄として注目されています。

米象徴する鉄鋼会社USスチール“買収反対”の背景

日本製鉄が目指す、アメリカの鉄鋼大手「USスチール」の買収について、バイデン大統領は反対を表明しました。

USスチールはアメリカ経済の象徴ともされる企業で、日鉄側は買収を完了させる強い意志を持っていますが、USスチールの本拠地では厳しい状況が見られます。

かつて世界一の生産量を誇ったUSスチールは、外国勢との競争に敗れ、地域は産業が衰退した「ラストベルト」の一部となりました。

*ラストベルト=かつて米国の工業中心地であったが、製造業の衰退により経済的に落ち込んだ地域

地元住民やUSスチールの従業員を代表するUSW全米鉄鋼労働組合は、アメリカの同業他社による買収を望んでいますが、今回の買収には反対の声が強いです。

バイデン大統領の反対声明は、2024年の大統領選挙で勝敗の鍵を握る激戦州にUSスチールの主要な生産施設が位置するため、選挙に向けた戦略的な判断から来ていると見られます。

また、トランプ前大統領も演説でUSスチール買収問題に言及し、「私が大統領だったらUSスチールの買収は認めない」と演説で強調。

これは、重要な組合票を獲得するための戦略と見られ、アメリカの製造業保護と労働者の利益を前面に押し出す姿勢を明確にしたものです。

専門家は、買収が実現するとしても、バイデン大統領の再選後や世間の関心が薄れた後になるだろうと予想しています。