週末の注目ニュース
トランプ氏のSNS上場へ
- トランプ前大統領が率いる新興メディア企業がSPACと合併し、ナスダック市場に上場する。
- 新会社はトランプ氏が立ち上げたSNS「トゥルース・ソーシャル」を運営し、時価総額は50億ドル超の見込み。
- トランプ氏は上場後の株式の約6割を保有し、個人資産が30億ドル程度増加すると予想される。
米24年度予算が成立
- アメリカの2024会計年度予算がバイデン大統領の署名により成立した。
- 予算総額は約1兆6,600億ドル(日本円で251兆円規模)に上る。
- 移民対策として、国境警備の人員を2,000人以上増やし、2万2,000人とすることが盛り込まれた。
アップル 中国IT大手と協議か
- アップルが中国で販売するiPhoneなどの端末で使う生成AIについて、中国のIT大手バイドゥと事前協議を行った。
- 現在、中国では国外の生成AIの利用が認められていないため、中国企業との提携が必要になったとみられる。
- iPhoneのAIをめぐっては、すでにグーグルなどとの協議が報じられている。
ニュースの要約記事
先週末の主要なニュースの一つは、トランプ前大統領が率いる新興メディア企業がナスダック市場に上場するというものでした。この企業は、トランプ氏が立ち上げたSNS「トゥルース・ソーシャル」を運営しており、新会社の時価総額は50億ドルを超える見込みです。これにより、トランプ氏の個人資産は大幅に増加すると予想されています。
また、アメリカの2024会計年度の予算がバイデン大統領の署名により成立しました。これにより、政府機関が部分的に閉鎖される事態は回避されました。本予算の総額はおよそ1兆6,600億ドルで、移民対策をめぐっては、国境警備の人員を2,000人以上増やすことが盛り込まれています。
さらに、アメリカのアップルが、中国で販売するiPhoneなどの端末で使う生成AIについて、中国のIT大手バイドゥと事前協議を行ったことが報じられました。現在、中国では国外の生成AIの利用が認められていないため、中国企業との提携が必要になったとみられます。
【為替見通し】円安ドル高が加速する理由
解説はSMBC日興証券の野地慎氏
- ドル円予想レンジ:150.70~152.00円
- 注目ポイント:強まるドル高圧力
みなさんも最近、ニュースなどで「円安ドル高」という言葉をよく耳にするのではないでしょうか。今、世界経済は大きな転換点を迎えており、各国の金融政策の違いが為替相場に大きな影響を及ぼしています。
まず、アメリカの中央銀行であるFRBは、今年中に3回の利下げを予想しています。利下げとは、経済の悪化を防ぐために金利を下げる政策のことです。
しかし、来年以降の金利見通しは以前より高く、すぐに利下げを行わない姿勢を見せています。つまり、ドル売りが起こりにくい環境なのです。
一方、ヨーロッパやオセアニアの国々では、スイスやニュージーランドが利下げに踏み切るなど、金融緩和の動きが広がっています。
金融緩和とは、お金を市場に多く流すことで経済を刺激する政策です。イギリスでも利下げへの期待が高まっており、先進国の多くが金融緩和に舵を切っているのです。
ここで、日本の状況を見てみましょう。日銀は17年ぶりに利上げを実施しましたが、今後2年で0.5%程度の利上げしか見込まれていません。
これでは、他国と比べて金融引き締めの度合いが小さく、事実上、緩和的な政策が続くことになります。
このような状況下では、世界的なドル高圧力が日本円にのしかかり、円安ドル高が進みやすくなるのです。円安が進むと、輸入品の価格が上がり、物価高につながります。私たちの生活にも大きな影響を与えかねません。
また、この背景を踏まえると、今後のドル円相場はドルの強さが続く限り、高値圏での推移が予想されます。
日本経済を守るためには、金融政策の正常化、つまり緩和からの脱却を進める必要があります。そのためには、日銀には市場の動向を注視しつつ、適切なタイミングで利上げを進めていくことが求められるでしょう。
為替相場の変動は、世界経済の動向、政策決定者の思惑、そして市場参加者の期待と不安が絡み合っています。これらを理解することで、為替相場の今後の動きに対する理解を深めることができるのです。
【株価見通し】日本株、海外投資家の動向がカギ
解説はシティグループ証券の阪上亮太氏
- 日経平均予想レンジ:40,500~40,800円
- 注目ポイント:海外投資家動向と日本株のバリュエーション(評価)
日本株は好調な動きが続いており、日経平均は史上最高値を更新しています。しかし、その一方で、トピックスのPERが15倍台に達するなど、市場の割高感に対する懸念も浮上しています。果たして、この上昇トレンドは続くのでしょうか?
まず、日本株の割高感を測る指標の一つとして、PER(株価収益率)に注目してみましょう。直近のTOPIX(東証株価指数)のPERは15倍台に入ってきています。
過去10年間のPERの推移を見ると、コロナ禍で一時的に利益が落ち込んだ時期を除けば、おおむね12倍から16倍のレンジで推移してきました。
つまり、現在の日本株は、割高というほどではないものの、PERの上昇余地は限定的になってきているのです。
PERがさらに上昇するためには何が必要でしょうか?
ここで重要なのが、海外投資家の動向です。過去のデータを見ると、海外投資家の日本株買い越し額とリスクプレミアム(TOPIXの利回りから10年国債の利回りを引いたもの)には高い相関関係があることがわかります。
つまり、海外投資家の日本株買いが増えれば、リスクプレミアムは低下し、PERは上昇する傾向にあるのです。
実際、2015年のピークから2022年末までの間に、海外投資家は日本株を30兆円以上売り越してきました。
しかし、2023年に入ってから買い越しに転じ、足元までで8兆円強の買い越しとなっています。ただ、これは過去の売り越し額と比べるとまだまだ少ない水準です。
今後、日本経済の内需回復やインフレの定着、ガバナンス改革の進展、中国からの資金シフトなど、海外投資家が日本株を買う材料は多く存在します。
もし海外投資家の買いが続けば、日本株のPERは過去のレンジ上限である16倍を超えて上昇する可能性もあるでしょう。
シティグループ証券の阪上氏は、今年のTOPIXのターゲットを3,100、日経平均を4万5,000円としています。これは、海外投資家の買いが続き、PERが16倍を超えることを想定した数字だといいます。
日本株の動向を予測するうえで、海外投資家の動きは非常に重要な要因となりそうです。
モーサテサーベイ
今週のマーケットを出演者が予想
- 調査実施期間:3月22日から24日
- 回答者数:35人
- 調査方法:インターネット経由
日経平均株価の予想(今週末終値)
中央値:4万600円(先週末の終値から280円安)
- 岩井コスモ証券 林氏の予想:4万800円(中央値を200円上回る)
・理由:過熱感と期末需給が交差しもみ合う展開。新年度への期待が下支えに。 - みずほ証券 三浦氏の予想:4万円(中央値を600円下回る)
・理由:日米の株価は過熱感あり上値が重い。利益確定売りに押されやすく、配当落ち後は下値模索が強まるとの見方。
ドル円相場の予想(今週末終値)
中央値:151円
- あそぞら銀行 諸我氏の予想:151円
・理由:FRBの利下げ観測、為替介入や日銀の追加引き締めへの警戒感から、ドル円相場の上値が重くなる見込み。
日銀の追加利上げ時期の予想
最も多かった回答:今年10月の会合(34%)
- 追加利上げ見込めないとの見方:30%
・UBS SuMi TRUSTウェルス・マネジメント 青木氏のコメント:アメリカの金利低下が鮮明になり、年後半の利上げは円高を助長するリスクが大。インフレ率やGDPギャップが十分プラスになっていないため、年後半の利上げは時期尚早。
モーサテ景気先行指数
- 日本:3カ月先の日本の景気を占う指数:37.1(2週連続で改善)
- 海外:アメリカ・ヨーロッパは改善、中国は2週ぶりに悪化
トランプ・リスクと バイデン・リスクに準備を【プロの眼】
解説は大和総研の矢作大祐氏
アメリカ大統領選挙が近づいてきましたね。民主党のバイデン大統領と共和党のトランプ前大統領の一騎打ちになりそうです。しかし、この二人が再び大統領の座を争うことは、経済や株式市場にとってリスクになる可能性があるのです。
トランプリスク
まず、トランプ氏が勝利した場合、最大のリスクは保護主義政策の強化によるインフレ上昇です。トランプ氏は中国からの輸入品に60%、その他の輸入品に10%の追加関税を課すと表明しています。これが実行されると、企業が直面する関税コストが大幅に上昇します。その結果、物価が上がり、インフレ率が3%ポイントも跳ね上がる可能性があるのです。
インフレが再び高まれば、金融引き締めが長引き、金融システムに負荷がかかったり、景気が大幅に調整されたりするかもしれません。トランプ氏の保護主義政策は、経済にとって大きなリスクと言えそうです。
バイデンリスク
一方、バイデン氏が再選した場合のリスクは、AI(人工知能)に対する厳格な規制の導入です。バイデン大統領は、AI開発業者に安全性テストの結果共有を義務付ける大統領令を出しました。民主党のリベラル派は巨大IT企業に厳しい目を向けており、AI規制を推し進めようとしています。
バイデン大統領は、リベラル派を取り込んで党内の団結を図るため、厳格なAI規制を進める可能性があります。これは、AI関連企業の成長を阻害し、株式市場に悪影響を及ぼすかもしれません。
現在、AI関連セクターの時価総額は他のセクターを上回っています。これは、AIがイノベーションを活性化させるとの期待があるからです。しかし、規制によってその期待が剥がれてしまうと、株式市場全体に悪影響が広がる可能性があります。
まとめ
一般的には、トランプ氏のリスクの方が注目されていますが、AIへの期待が強い現在の株式市場にとっては、バイデン氏のリスクの方が大きいのかもしれません。
アメリカ大統領選挙は、経済や株式市場に大きな影響を与えます。トランプ氏とバイデン氏、両候補のリスクを理解し、備えておくことが重要です。
GDP目標達成に高いハードル?不動産改革の行方【チャイナエコノミー】
解説は東洋証券の奥山要一郎氏。
中国経済は今、大きな転換点を迎えています。新型コロナウイルス感染症の影響から立ち直りつつある一方で、不動産市場の低迷という新たな課題に直面しているのです。
今年の全人代(全国人民代表大会)では、経済成長率(GDP)の目標を「5%前後」と設定しました。しかし、その達成には不動産市場の回復が不可欠です。
昨年はゼロコロナ政策の終了という追い風があったものの、今年はそれがありません。5%の成長を実現するには、より積極的な財政支援が必要となるでしょう。
また、消費者物価指数(CPI)の目標は「3%前後」とされています。しかし、2月のCPIは0.7%のプラスにとどまり、1-2月の累計では前年同期比0%と横ばいでした。
市民の消費マインドの低下や需要不足が、物価上昇を抑えている可能性があります。
不動産市場に目を向けると、新築住宅の販売は金額、面積ともにマイナス幅が拡大しています。春節休暇中の新築住宅成約面積は、主要25都市で前年比27%減少しました。
一方、中古物件の取引件数は70%超増加しています。消費者は先行き不透明感から新築物件の購入を控え、安心感のある中古物件に流れているようです。
中国政府は、深刻な債務超過に陥った不動産企業について、「破産すべきものは破産し、債務再編すべきものは再編すべき」との方針を示しました。
これまでの「大きすぎて潰せない」という考え方から一転、不良債権の処理に乗り出す姿勢を見せています。
ただし、住宅ローン金利の引き下げや優良プロジェクトへの資金調達支援など、市場の下支えも続けられます。「アメとムチ」の政策で、不動産市場のソフトランディングを目指しているのです。
中国経済は正念場を迎えています。GDPやCPIの目標達成には、不動産市場の回復が欠かせません。しかし、その道のりは平坦ではありません。
過剰債務を抱える不動産企業の処理という難題に、政府がどう立ち向かうのか。その行方が、中国経済の将来を左右することになるでしょう。